復讐と純愛、イ・ジョンソクが報道記者に!『ピノキオ』鑑賞記

※以下、ネタバレばかりの文章になります。未見のかたは、ご注意ください。

※アイキャッチの画像は、韓国SBSの『ピノキオ』宣伝画像です。

『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』を見たことをきっかけに、韓国ドラマの世界に再びはまっている私。U-NEXTの31日間無料トライアルを利用して、さらにズブズブと韓ドラワールドにのめり込んでいます。

主演イ・ジョンソク、脚本パク・ヘリョンのコンビ作品として『あなたが眠っている間に』(3作目)、『君の声が聞こえる』(1作目)を連続して見た私はその面白さに圧倒され、いよいよ、ネットなどではとても評価の高いコンビ作品第2弾『ピノキオ』の世界に突入しました。

この作品、まずざっくりとあらすじを言うと――、

幼い頃、非道な報道被害が原因で家族を失った青年ダルポ(イ・ジョンソク)が、養子に入った先でともに成長した、ピノキオ症候群を患う美少女イナ(パク・シネ)とともに報道記者の道へ。
自分たち家族が崩壊するきっかけになった血も涙もない報道を繰り返し、今は大テレビ局の部長職の座にまで上りつめたにっくきソン・チャオク(チン・ギヨン)と闘うべく、“真の報道記者とは何か”を自問しながら成長していく社会派の青春ラブストーリー。
とでもいうことになるでしょうか。
尊敬していた消防士の父親が仲間とともに大規模火災の現場に赴くも、どういうわけか行方不明になってしまい、「仲間たちを裏切って現場から逃げたとんでもない消防士」だなどとニュースのやり玉に挙げられることになるドラマの発端から、次々と目の離せない展開になっていくのですが……
うーむ、なんというのでしょうか。
私としては正直、どうしてこの作品がそこまで評価が高いのか、ちょっとよく分からないところがありました。
もちろん、主演のイ・ジョンソクは素晴らしいです!
軽妙な部分も持ちながら、せつない想いを抱えてグッとそれを堪える複雑なキャラ(主人公ダルポ)を、ジョンソクでなければできないような演技で、見事に具現化していたように思います。
何よりも、ジョンソクが生きてそこにいるだけで、ついうっとりとその動きの一つ一つを目で追いたくなってしまう、スターならではの華。それを惜しげもなく振りまきながら、全20回を疾走しきるジョンソクの圧倒的な存在感は、やはり現代韓国を代表する演技者の一人だと再認識させられずにはいません。
ですが、私なりに感じた『ピノキオ』の作品としての印象は、やはりちょっと「軽すぎる」気がしました。
ドラマの導入は重々しく(何しろ父は行方不明、母は自殺、兄も出奔。家族はバラバラになり、早くも「復讐」というテーマがじわりと滲みだしてきます)、序盤から中盤にかけては、生き別れた兄ジェミョン(ユン・ギュョンサン)がドラマの前面にググッと出て来て、まさに関係者への「復讐」を敢行。あろうことか、復讐のための殺人にまで手を染めてしまいます。
こうなってしまうと、もはや悲劇の予感しかありません(少なくとも私はそうでした)。
敵役のソン・チャオク(幼なじみのイナの実母でもあります)もどこまでも憎々しげで、視聴者の私もついエキサイトし、「このオンナを徹底的に叩き潰すのじゃ、ダルポ!」と鼻息荒げて思わずにはいられなかったものでした。
ですが結果的には、これ以上兄にひどい真似はさせられないと彼に自首をうながし、兄に代わって「これからは俺が復讐をしていく!」とジョンソクが誓いを新たにするあたりまでが、私的にはこのドラマのピークだった気がします。
そう。兄ジェミョンが逮捕され、一気にドラマの後景に下がってしまうのと同時に、この物語、何やらへなへなと、張りつめていたテンションが下がってしまうのです。
ドラマは終盤に近づくにつれ、実は敵役のソン・チャオクの背後にはさらなる巨悪が存在していたという流れになり、それと同時にチャオクからは見る見る牙や毒が抜け、一丁上がりの引退おばさんみたいになってしまいます。(その娘であるイナとダルポの恋愛を成就させるためには、「実は母親も悪い人ではなかった……」とするしかないのかも知れませんが……)
けれど、見ているこちらとしては、何やら梯子を外されたような気分にも。
代わってドラマの前面に出て来た「巨悪」が、私的にはたいして悪党にも思えず、本気で「これじゃ殺人まで犯したお兄ちゃんがマジで浮かばれないな……」と思ったほどでした。
はっきり言うと、あまりカタルシスの感じられないドラマでした(ファンのかた、いらっしゃいましたら申しわけありません。ドラマの感想は人それぞれだと思っていただければ幸いです)。
何人かのキャラがそれぞれの見せ場でおいおいと泣いてみせますが、「お前より、人まで殺してしまったお兄ちゃんの方が可哀想だぞ……!?」と兄ジェミョンに肩入れしたくなる気持ちもあり((^_^;))、私はそのどれにもあまり感情移入できないままでした。
多数登場する脇役たちも、回が深まれば深まるほど味わいと存在感が増してくるといった魅力的なキャラは一人もなく、それもあってでしょうか、ドラマそのものもあまり深みが増していきませんでした。
イナとチャオクも、結局最後までどこか本物の母子らしくないままでしたし、チャオクがひよったのなら、最後は夫(イナの父親)との関係も何かしら進展があるのかと思って見ていても、結局そんなエピソードはなかったですし……。なんか、各キャラの背景が、わりと薄っぺらに感じられてしまうのです。
それと、最後はダルポとイナが結婚式のシーンを迎えますが、ダルポってお兄ちゃんに結婚の報告してましたっけ? あんなに何度も面会に行っているのに、「結婚する」と告げるシーンはなかった気も……。何だか最後まで、孤独をともにして獣道をひた走り、愛する家族のために暴走したあんちゃんの生き様が哀れでなりませんでした。
そんな次第で、面白かったことは面白かったものの、いろいろと消化不良に思える『ピノキオ』。
もう少し短い尺にし、登場人物もザックリと数を減らしてもっとスリムに。敵役の女性アンカーはどこまでも強くしたたかで、憎々しげなままにして(と言いつつ、実は密かに娘のイナのことは誰よりも愛しているものの、どこまでも非道な母親道を貫こうとしている、とかいうのはアリだと思います)、そうした巨悪に主人公のダルポが全力で戦いを挑んでいく、といったシンプルな激突の形にした方が、より面白かったのではないかと、個人的には思いました。
なんて、言うは易く行うは難し、なんでしょうけどね。
さあ、それはそれとして、私はもうすっかりイ・ジョンソクに夢中です(笑)。
次は何を見ようかしら。(^_^)
※本ページの情報は2019年7月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。

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この記事を書いた人

占術家、「幽木算命塾」塾長、怪異蒐集家。
算命学、紫微斗数、九星気学などの占術を使い、運命(宿命、運勢)という名の神秘の森に分け入る日々。
通信制私塾「幽木算命塾」で後進の指導にあたる。
占いで出逢ったお客さまなどを中心にさまざまな怪異を蒐集し、竹書房怪談文庫などで公開も。
奇妙な毎日は、ご神仏とともにある。

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