とても整然としていて、きれいな館内。
採光状態のいい開放的な設計で天気もよかったため、この美術館を楽しむには、まずベストに近い状況だったと思う。
午前中ならさらによかった気もしたが、贅沢な話。

胸をドキドキさせながら(子どもか笑)、いざ会場へ。

はしもとさんの作品に関しては撮影OKの場内。
私がよくいく他の展覧会と明らかに違うのは、お客さんたちの歓声や笑い声、子どもたちのうれしそうな声が響き、パワフルでアットホームな「氣」が会場内に横溢していたこと。
はしもとみおさんは「生」をテーマに、主として「動物たちの肖像彫刻」を制作する彫刻家さんだそうだが(恥ずかしながら、私は存じ上げずにいた)、場内にははしもとさんがこの世に誕生させたリアルで愛らしい生き物たちがずらり。

触ってはいけないのは当然だが、至近距離まで近づいて一緒に記念撮影ができたりもするため、なにやらどこぞの動物好きのご家庭にお邪魔をし、温もりのある部屋の中で、みんなでワイワイと騒いでいるような錯覚にとらわれる。
なんとも気持ちのいい空間。
いろいろな動物がいたけれど、ネコ好きの私は、かわいいネコたちに癒やされまくり。
あなうれし。
そして――。

いらっしゃった。
ひときわ大勢の人たちが、思い思いにスマホを向ける熱い一角に。

あはははは。
思わず笑ってしまうかわいらしさ。
鳥羽水族館のメイ(右)とキラ(左)をモデルにした二匹。
本当に生きているかのようである。
いや、違う。
まちがいなく、生きてそこにいる。

メイはムンクの「叫び」みたいなポーズ、キラは「なにとぞ、なにとぞ」みたいなお祈りポーズ。
はしもとさんの、生き物を見る「目」の優しさに胸を打たれる。

こんな見事な生命力と一瞬の美を彫刻作品の永遠の中に封印できるなんて、なんとすごい彫刻家さんだろう。
メイとキラの後ろに、入れ替わり立ち替わり人が駆け寄り、二匹と同じようなポーズで楽しそうに写真を撮っていた。
そんなみんなの嬉し恥ずかしな笑顔も、この美術展ならではの、かけがえのない一瞬のアート。
はしもとさんにしてみれば「してやったり」だったろう。

予定よりかなり長居。

外に出ると、祭りの終わりが近づいていることを告げる、秋の夕暮れが忍びだしていた。