前回の続き。
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マイ仏教美術①
もう10年以上も前のことになる。 ある時私は、いきなり仏像にめざめた。 自分は何をしているのだろうと不思議だった。 だって、そんな人間ではなかったから。 家族の生...
やがて私は関西圏だけでなく、みちのくや中部の方々にまで守備範囲を広げ、今度は東日本各地で、魅力溢れる古仏たちと出合うようになった。
いわゆる「地方仏」に見事にハマった。
行く先々で出逢うお寺のかたから、さらにいろいろと話を聞いた。
仏像に夢中になってからずっと十一面観音の虜だったが、やがて私は十一面観音だけでなく、自分が強く、強く、密教仏たちに魅せられていることに気づいた。
薄暗いお寺の堂内や収蔵庫から姿を現すさまざまな密教仏にテンションが上がり、自然に私は手を合わせ、深く、深く、祈りを捧げた。
修験道のご神仏とも邂逅を果たし、改めて奈良を訪れ、吉野山(金峯山寺の蔵王権現)に拝みに出かけたりもした。
そして私は、やがて当然の成りゆきのように、今度は博物館などで開催される「仏像展」にも、勇躍出かけるようになった。
ところが――。
ここで私は、はたと腕組みすることになる。
どうしてだろう?
快適で整然とした博物館で対峙する仏像たちは、ちっとも私に語りかけてこなかった。