ほたるを見に出かけた。
それなりに長いこと生きているが、これほどまでのほたるの群舞を目の当たりにしたのは初めてである。

いや、あの、こんな画像で判断しないでくださいね。
どんなにがんばってもスマホではこの程度の写真しか写せない。
だが、目の前を小さな火の玉が、天の葉脈を縫うかのようにふわり、ふわりと、舞いあがったりこっちに来たりする闇の中は、なぜだかそこはかとない儚さや悲しみをたたえ、私の中の遠い、遠い、なにかとどこかでつながっているような、この世のものとは思えない夜市だった。
3000匹ぐらい、源氏ぼたるが舞っていたとか。

待って。
連れてって。
指を伸ばした。
いい年こいてほたるに掴まり、私もまたふわりふわりと青白い月に近づいたり、水辺へと戻ったりしているような浮遊感。
スマホなどのフラッシュ撮影はもちろん、明かりを点けることも禁じられた深い闇なので、とにかく暗い。
そこに人がいることは分かっても、顔なんて見えない。
あちこちから歓声がした。
子供より、大人がはしゃいでいた。
そんな、闇の底のいっときのできごと。
いつまでも触れてはいられない時間だから、光たちは、あれほどまでに美しく感じられるのかな。