記録によれば、この本を買ったのは2015年9月とある。

そう簡単には拝めない秘仏40数体を紹介した、仏像好きにはたまらない一冊。
当時の私は、時間があれば京都だ奈良だ滋賀だ若狭だと、西日本各地を中心にさまざまな仏像を拝んで回っていた。
憑かれたように、という言葉がふさわしかった。
とにかくあちこち見て回った。
だがそんな私でも、いまだに拝めないままでいる仏様というものも、もちろんたくさんある。
中でも、拝みたくても拝めない「秘仏」はその最たるものだ。
ところがようやく念願かない、長いこと片思いをし続けた一体の秘仏と、今回私は邂逅を果たせた。
それがこの本で知った、表紙の仏様である。
目にした途端、心奪われた特別な仏像。
毎年11月初旬に一日だけ、個人でも拝観できる特別な日が設けられていることは知っていたが(そして問い合わせたこともあるが)、なかなかご縁を頂戴できず、気づけば10年経っていた。
ところが、2025年。
いよいよチャンスは巡ってきた。
滋賀県守山市は木浜町にある、福林寺の秘仏ご本尊。
厄除け十一面観世音菩薩。
44年ぶりの特別ご開帳が、16日間にわたって行われている。
「幽木算命塾」のテキストと動画を作り終えた私は、まだ暗い内に自宅を後にし、新東名を一路、滋賀へと向かった。

