庶民のファンファーレ

先日、編集者のSさんと電話で話していたら(現在、私に持病のぜんそく発作が出ているので、話したくてもそうは話せないのだが)、ローリングストーンズの新譜(「ハックニー・ダイアモンズ」)を買いに行こうと思っているという。

私にとってSさんは、ナボコフやバタイユまでをもテリトリーとする、元文学青年の文芸編集者。

その人がストーンズとはと、ちょっと意外に思いながら話してみると、なんと学生時代はバンドをやっていたギター少年で、小学生の頃まではピアノも習っていたという。

じつに意外。

しかも、いちばん好きなギタリストはストーンズのキース・リチャーズだという。

聞いてみるものである。

もう13年ものつきあいになるが、いつも仕事の話がほとんど。

こういう話はあまりしたことがなかったのだが、じつは私もローリングストーンズ大好き少年だったので、いい歳をしたおっさん二人、しばし童心に返ってストーンズ&70年代洋楽ロック談義にふける。

聞けば作家仲間のSさんやYさんも大のストーンズファンで、某小説誌編集長のXさんにいたってはストーンズファンにしてじつは仕事よりバンド業に情熱を燃やす兼業ミュージシャンでもある、などということまで教えてもらったりして、おおいに盛りあがる。

いいですよね、ローリングストーンズ。

今の若い人は「え、そうなの!?」かも知れませんが、かつてストーンズと言えば、日本への入国が禁止されていた「危ないロックバンド」の代表格(なつかしいですね、長谷川和彦監督の『太陽を盗んだ男』。私の好きな映画のひとつです)。

そんなストーンズ見たさに、金もないのに意を決して単身ニューヨークまで見にいったこともありました。

と言っても、私が見にいったシェイ・スタジアム、私の席ではステージまでの距離が遠すぎてなんだかよく分からず(周囲の客たちが吸っているたばこみたいなものから、嗅いだこともない匂いがしていました。「ああ、これはマリファナです」と教えてくれたのは、現地でいろいろとサポートしてくれたNY在住の知人でした)、今となっては、MoMAメトロポリタン美術館で過ごした時間の記憶のほうが濃密かつ鮮烈ですが(アートも大好きなので)。

帰国して早々体験した「ストーンズ来日決定!」の報に触れての腰の抜けるようなショックも、今となってはいい思い出です笑。

ちなみに、私が一番好きなストーンズのアルバムは、1977年のライブ盤『ラブ・ユー・ライブ(LOVE YOU LIVE

そもそもストーンズはライブに限ると思いますが、このライブ盤は中でも別格のかっこよさ。アンディ・ウォーホルによるアートワークもとんがったロック小僧のハートに深々と突きささるエグさでした。

オープニングとして流れる開演前の「庶民のファンファーレ(Fanfare For The Common Man)」を聴くだけで、私は何の苦労もなく16歳の高校生に戻ります。

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この記事を書いた人

占術家、「幽木算命塾」塾長、怪異蒐集家。
算命学、紫微斗数、九星気学などの占術を使い、運命(宿命、運勢)という名の神秘の森に分け入る日々。
通信制私塾「幽木算命塾」で後進の指導にあたる。
占いで出逢ったお客さまなどを中心にさまざまな怪異を蒐集し、竹書房怪談文庫などで公開も。
奇妙な毎日は、ご神仏とともにある。

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