不気味な「偶然」

このところ、ちょっと奇妙なことがつづいている。

いずれも怪談の執筆がらみ。

現在進行形の怪談集執筆に関係したある理由で、もう長いことおつきあいをさせていただいている、海外在住のお客さまに連絡を取らなければという状況になった。

時間が許せば、互いに近況など話して雑談をしたりする関係だが、ここ一年ほどはやりとりもしておらず(とにかく多忙なかたなのです)、その方からご紹介いただいたほかのお客さまを通じて近況などを聞いていたものの、ご本人とはずいぶんご無沙汰だった。

ところが。

ある日突然そのかたから、ふいに連絡をもらった。

私はびっくりし、

「いや、すごい偶然ですね。ちょうど、ご連絡せねばとここ数日、ずっと思っていたところだったんです。もしかして、私の念でも、飛びましたかね!」

などと冗談半分で返事をした。

と言うのは、以前ある霊能者さんから、

「幽木さんは、とっても念が強いですよ。しかもビュンビュン飛んできます」

と指摘されたことがあり、そのことを思いだしたのだ(もちろん本人にそんな自覚はない。私は平凡な人間だ)。

でも結果的に、連絡をくださったそのかた(かなり霊的に興味深いものをお持ち)は、奇妙な偶然についてはなにもおっしゃらなかったので、話はそれで終わった。

すると、それから数日後。

今度は、別のお客さまから、またも突然連絡が来た。

半年ぶりぐらいである。

正直、とても奇異に感じた。

じつはその前日、私は「これからやらなくてはいけない仕事リスト」をまとめたのだが(公私ともになにかと多忙で、カオスな状況になってきている)、この方にも怪談がらみで連絡をしなくてはと、リストに名前を記したばかりだったのだ。

「いやあ、じつは……」

私は一人目の方のことを話し、すごい偶然だなあと思ってと話をした。

するとその方は、こう言った。

「すごいですね。じつは昨日から、先生にLINEしなきゃって思ってたんです」

うーむ……。

さすがに腕組み。

その方も特異な霊能力を持つ不思議なかたなので、もしも私が念を飛ばしていたとしたら、一人目の方と同様、強い力でキャッチなさったのかなあなどと思い、その方にもそうお話しして、不思議な気分でやりやりを終えた。

こんな偶然もあるのだなと、いささか落ちつかない気持ちになりながら。

ところが。

これでは終わらなかった。

三人目のかたから、連絡が来た。

ここ数日、私はある事情から、ずっとその方(少し前に怪談の取材をさせていただいた)のことを思いだし、連絡の必要性を感じていたところだったのだ。

「……これ、本当に全部嘘じゃないんです」

ぞわぞわするものを感じつつ、私はその方にここまでのあれこれを話した。

言うまでもなく、その方も霊感が鋭い。

その方から取材させていただいたとんでもない怪異は、いつかみなさまにもご紹介できるはずである。

(もしかして、ほんとに私の念……?(^_^;))

いやでもそんな気持ちになる。

なお誤解のないように言うと、私は、もしも私という人間に強い念なるものがあるとしたら、それを誇らしいと言っているのではまったくない。

なんとも形容しようのない気持ちになってしまうのは、私の念(あるとして、だが)をキャッチなさったかも知れない霊能者のみなさんの「霊的アンテナの感度の高さ」に対する驚嘆の思いからだ。

「とっても興味深いお話です」

話を聞いたその方は言った。

たしかにここ数日、その方もある理由から、私のことを思いだしていたそうなのだ。

そして、その方はさらに続けた。

「そう言われると、たしかに私、幽木さんの念をキャッチしたのかもしれませんね。でも、逆に私が飛ばした可能性もありますけど」

あ。

なるほど。

目から鱗。

その発想はなかったですと、私は言った。

なぜなら、もしもそうだとすると、私にも人様から飛んできた念をキャッチする能力があることになってしまうからだ。

ただ、言われてみればこの三人のみなさん、向こうが私のことを思いだしたから、私もその方たちのことを気になりだしたという可能性も、たしかにないとは言いきれない。

そして、もうひとつの可能性は――

「そんなのただの偶然でしょ。あはは」

うむ。

たしかにそうかも知れない。

だが、もしもそうだとしたら、短い間に立てつづけに3回もというこの偶然は、さすがに気味が悪い。

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この記事を書いた人

占術家、「幽木算命塾」塾長、怪異蒐集家。
算命学、紫微斗数、九星気学などの占術を使い、運命(宿命、運勢)という名の神秘の森に分け入る日々。
通信制私塾「幽木算命塾」で後進の指導にあたる。
占いで出逢ったお客さまなどを中心にさまざまな怪異を蒐集し、竹書房怪談文庫などで公開も。
奇妙な毎日は、ご神仏とともにある。

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